ホンダヨンダメモ/Z

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ドイツ映画『ぼくらの家路』

2013年制作のドイツ映画『ぼくらの家路』が9月19日から日本で公開される。試写を観せていただいた。原題は"Jack"。

監督はEdward Berger、パンフでの表記はエドワード・ベルガー。主演は11歳の少年、Ivo Pietzcker。

冒頭の場面。朝、10歳のジャック(Pietzcker)が朝食を作っている。弟である6歳のマヌエル(Georg Arms)の世話をしつつ、家事をこなしているらしい。ふたりはベルリンのアパートの一室で、ふたりで暮らしているように見える。

母親はいる。しかし彼女は精神的に幼く、自分のこと(遊び、男)で精一杯だ。彼女は子どもたちに対して愛情を持ってはいるのだが、結果としてジャックへの「甘え」という形でしか自分の子どもに接することができない。

ある日、ジャックが湯船にためた湯が熱湯で、マヌエルに火傷を負わせてしまう。それがもととなり、ジャックは施設に預けられることになる。あることがきっかけでジャックはその施設から抜け出し家に戻るが、母はいない。弟とふたり、ベルリンの街を母を探して歩くことになるのだが…。

つまりはネグレクトを受けている子どもの話なのだけれど、この映画は主人公ジャックをひたすらストレートに追い続けるのだ。そしてジャックを演じるイーヴォくんの、おそろしく大人びた、憂いのある表情がカメラをしっかりと受け止める。夜のベルリンを背景にジャックの姿がきれいに浮かび上がる、その画面を楽しむ映画、という気がする。登場する人々の人物像が深く描かれることはない。複雑なストーリーがあるわけでもない。ベルリンも、大人たちも、食べ物も、兄弟に与えられるものはみな薄っぺらでジャンクなものばかりであり、だからこそジャックの冷静さ、真剣さ、必死さがくっきりと際立つ。そういう映画。

さて、そして結末。これをどう捉えるかで、この作品への評価はだいぶ変わってくるのではないか。少なくとも、母の未来を思いやり…などと言う人はイーヴォくんにしてやられてるんじゃないかな、と思うんだけど。公開されたら、観た人と話がしてみたい…。