ホンダヨンダメモ/Z

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『孤独のグルメ 2』(扶桑社)

久住昌之原作、谷口ジロー作画。18年ぶりの第2巻である。我らが井之頭五郎が13箇所で、ひとり、飯を食う。

孤独のグルメ2

孤独のグルメ2

 

 ぼくは同僚というものを持たないので、基本的に昼飯はひとりで食べる。その日の具合によって適当な時間に、さて腹が減ったと店を探す。最初は無限の可能性に開かれている「可能性の束」としての昼飯が、あれこれと考え悩み彷徨ううちにしだいに絞られてきて、最終的にたとえばラーメンと餃子とライスのセットか何かのような具体的な一品に収束する、そのいわば量子力学的なプロセスが、『孤独のグルメ』の登場によってクリアな輪郭を持つものとして「発見」されたのだった。

そして同時に、このマンガの出現は、ひとりで飯を食う者に「心の声」を与えたのである。店の中を、店主を、客を、メニューを観察し、それをもとに思考し、その思考を自己批判しフィードバックすることで、目の前に出てきた食い物に「物語」が与えられるのだ。ひとりだからこそ、孤独だからこその、豊かさ。

よく見てみれば、五郎は店主店員とあまり会話を交わさない。多くのグルメマンガとの大きな違いがそこにある。ペルー料理屋でその料理の由来背景を店主やその母の個人的思い出とともに語られても、五郎は「はあ」とか「へえ」とか言うだけだ。その場で完結する一話の物語を紡ぐのは、あくまで自分ひとりのことなのであって、五郎はどこまでもストイックなのである。

『花のズボラ飯』も、続きが出ないかなあ。