ホンダヨンダメモ/Z

読書メモ。読んだもの観たもの聴いたもの。

ジャンディ・ネルソン『君に太陽を』

(Mediumに以前書いたものを転載)

 

三辺律子訳、集英社文庫、2016年11月。原作は2014年刊。2015年のアメリカ図書館協会マイケル・L・プリンツ賞受賞(ヤング・アダルト向け作品に贈られる賞)。

 

君に太陽を (集英社文庫 ネ 2-1)

君に太陽を (集英社文庫 ネ 2-1)

 

 

以下、簡単なメモ。

双子のきょうだい、ノアとジュード。ノアは豊かな芸術的才能を持った内向的な少年で、ジュードは快活でコミュニケーション能力に長けた少女。物語はこの二人が、ノアは13歳の時の、ジュードは16歳の時の出来事を、1人称の語りで交互に綴っていきつつ進んでいく。この3年のギャップによってその前後の大きな変化が物語的には「謎」となり、さらに二人がそれぞれ相手に対して隠していることもあり、その相乗効果で読者は緊張感をはらみつつページをめくることになる。非常にうまい構成。読者は「全能の作者」のコントロール下に置かれ、大団円へと導かれる。

さらに、性と性格の異なる双子、親からの承認問題、LGBT、母と父の「男女問題」、死とその受容、自己実現、性体験とその後遺症、思春期と現実逃避、スピリチュアリズム、などなどといった現代的トピックがてんこ盛りに盛り込まれ、それをアメリカ小説特有の誇張に満ちた隠喩的表現と若者言葉によって饒舌に語るものだから、ぐいぐいと読まされるが、お腹いっぱいにもなる。

文庫で500ページを超える長編にもかかわらず、語りのうまさで読まされてしまう。でもその作為に、いかにもフィクショナルな文体・結構に、ちょっと留保もつけたくなる、気もする。いや、おもしろいんだけど。