ホンダヨンダメモ/Z

読書メモ。読んだもの観たもの聴いたもの。

一杯おごらせての会、週刊読書人の「上半期の収穫」、「こどもとしょかん」第178号

2023年8月10日(木) 体も気分も低空飛行の日々で、地面をみれば蝉が仰向けになっており、空をみれば地面と平行に線を引いたように底の真っ黒な雲がそれでも白く輝く頂をもくもくと青の地に食い込ませている。史上最も暑い夏というその不穏さに、それだけで…

『幽霊綺譚』

2023年8月4日(金) 昨夜の夢。ハンブルクの中央駅(という表示がある)にいる。なぜかひとけのない、殺風景な風景。アルスター湖はどちらか、港はどちらか、と思いつつ歩く。いつのまにか、Y先生や新型コロナで亡くなった友人、その他数名と路地を歩いてい…

岩波「世界」8月号、ビリヤニ、マルティン・ヴァルザー

2023年8月3日(木) 午前中はクルマでちょっと足を伸ばしてコーチャンフォーへ行き、店内のドトールで朝ごはん&翻訳作業。書店のほうを覗いたら岩波「世界」の8月号があったので、思わず購入。 午前中のドトールの広い店内には年配の男性客がたくさんいた(…

横須賀美術館、山岸涼子『艮』、『BOOKMARK 2』

2023年8月1日(月) 展覧会 クルマを飛ばして横須賀美術館へ行き、「new born 荒井良二」展と「没後20年 若林奮」展を観た。 荒井良二の絵本原画だけではなく、展覧会や芸術祭に出品された一枚絵、立体作品などが並び、荒井による手書きのキャプションが添え…

高宮利行『西洋書物史への旅』と練馬区立美術館「本と絵画の800年」展

高宮利行『西洋書物史への旅』(岩波新書、2023年2月) 西洋書物史への扉 (岩波新書 新赤版 1963) 作者:髙宮 利行 岩波書店 Amazon 著者は慶應大学名誉教授、中世英文学、書物史が専門であり、かつ愛書家、古書蒐集家。本書の内容は、著者が「はじめに」で簡…

【読了本】廣野由美子:小説読解入門 『ミドルマーチ』教養講義(中公新書、2021年4月)

昨年(2022年)末、ジョージ・エリオット『ミドルマーチ』を光文社古典新訳文庫の廣野由美子訳で読んだので、買ったときに斜め読みしかしていなかった本書をあらためて読んだ。12月30日にツイッターなどに書いた感想は以下の通り。 ****** ジョージ・…

【購入本】2021年9月3日

梨木香歩『物語のものがたり』(岩波書店,2021年4月) 斎藤美奈子の『挑発する少女小説』を読んで,この本の存在を思い出したので購入. 本書は、これまでに各所でしたためてきた児童文学関係の書評や解説を中心に、集めていただいたものである。(「物語の…

【購入本】2021年8月30日

8月が終わっていく.今年も残るは3分の1.仲間が一人死んでしまって,秋を迎えるのがとてもつらい.死に方が死に方だけに手触りのある実感が訪れず,不在というただその情報だけが世界に穴を開けている.その原因が今も,そしておそらくあと数年は,周囲に普…

購入本(2021年8月26日)

アーシュラ・K・ル=グウィン『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』(大久保ゆう訳、フィルムアート社、2021年7月) 原書は2015年刊("Steering the Craft A 21st Century Guide to Sailing the Sea of Story")。1998年に出た本の改訂版と。 本書は、…

【購入本2021年8月23日】

筒井清忠編『大正史講義【文化篇】』(ちくま新書、2021年8月10日) 以下、目次で気になったところのみ。 第10講 鈴木三重吉・『赤い鳥』と童心主義(河原和枝) 第11講 童謡運動—西条八十・野口雨情・北原白秋(筒井清忠) 第12講 新民謡運動ーローカリズム…

ウルリヒ・ヘルベルト『第三帝国』

副題「ある独裁の歴史」、小野寺拓也訳、角川新書、2021年2月10日 第三帝国 ある独裁の歴史 (角川新書) 作者:ウルリヒ・ヘルベルト,小野寺 拓也 発売日: 2021/02/10 メディア: Kindle版 C.H.ベック「Wissen」叢書の1冊からの翻訳。原書は2018年刊。ナチ政権…

石井妙子『女帝 小池百合子』(文藝春秋、2020年5月29日)

布団にもぐり込んでも(いや、このところ暑いので実際にもぐり込んでいるわけではないが、常套句として)、頭が冴えてなかなか寝付けないので、たいていKindleで本を読んでいる。小説だとつい読み進んでしまってよけいに眠れないから、美術や哲学関係とか、…

『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』(吉岡乾著、創元社、2019年9月)

著者(よしおかのぼる、と読む)はある言語が話されている場所に赴き、その言語を記述し記録する「フィールド言語学」を専門とする言語学者。東京外国語大学でウルドゥー語を専攻し、博士課程を終えたあと現在は国立民族学博物館に勤務。パキスタン北部のブ…

『建築家夫婦のつくる居心地のいい暮らし』

八島正年・八島夕子著、オーム社、2018年10月刊。 建築家夫婦のつくる居心地のいい暮らし 作者:八島正年+八島夕子 出版社/メーカー: オーム社 発売日: 2018/10/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) 著者の二人は横浜山手町で「八島建築設計事務所」を営む建…

池内紀先生の訃報

今、池内紀先生が亡くなったとのニュースが。8月30日に死去、と。78歳。 ぼくは、最近翻訳した2冊とも雑誌などで書評していただいたし、中公新書でこの7月に出たヒトラーに関する本を読んだばかりだったし(ここにも感想を書いた)、ちょっと驚いている。息…

佐々木健一『美学への招待 増補版』(中公新書、2019年7月)

2004年に刊行されたものの増補版。著者は美学者・フランス思想研究者として国際的に活躍してきた。誰それがこう唱えたという学説史的なスタイルではなく、「誰もが生活のなかで出会っている身近な変化に注目する」方法で「美学」へと読者を誘おうというコン…

池内紀『ヒトラーの時代』(中公新書、2019年7月)

副題に、「ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか」とある。 ヒトラーの時代-ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか (中公新書) 作者: 池内紀 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2019/07/19 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る カール・クラウ…

岩﨑周一『ハプスブルク帝国』(講談社現代新書、2017年8月)

ヨーロッパの歴史を考えるときはもちろんのこと、文学や美術を読んだり観たりする際にも、「ハプスブルク」とは何か、把握しておきたい。だけどその歴史的・地理的拡がりの大きさと、聞きかじりの通俗的イメージが、理解の邪魔をする。その全貌が、どうもモ…

ブレヒト『アンティゴネ』(谷川道子訳、光文社古典新訳文庫)

谷川道子訳ブレヒトとして光文社古典新訳文庫では4冊目となる『アンティゴネ』を読んだ。 アンティゴネ (光文社古典新訳文庫) 作者: ブレヒト,谷川道子 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2015/08/06 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 「ソ…