ホンダヨンダメモ/Z

読書メモ。読んだもの観たもの聴いたもの。

完結した『違国日記』と『潮が舞い子が舞い』

2023年8月13日(日)

15日に奈良の国立博物館に行く予定で奈良ホテルに部屋もとってあったのに、ピンポイントで東海近畿に台風が直撃しそうなので、残念ながらキャンセル。ツマは9月3日まで展示されている浄瑠璃寺の阿弥陀如来像(保存修理が完成しての展示)をどうしても観たいと、8月中の奈良訪問を模索しているようだ。

マンガ

・ヤマシタトモコ『違国日記』11巻を読む。小説家の叔母と、交通事故で両親をなくした姪とが同居生活をする中で、それぞれが死んだ者との、死んだ者の残した言葉との、折り合いをつけられずにいる。おそらくは発達障害をもつ叔母の対人関係における苦しみ、自分は何者になるのかなれるのかという思春期の高校生の姪の悩み。それらがクリアな形では解決されることなく(だって人生はそもそもそういうものだ)、しかし、ああ彼らはそうやって生きていくのか、と違和感なく思わせてくれるような終わり方だった。充足感と同時に寂しさを覚えつつ読み終えた。ヤマシタトモコの作品では、会話の中で発せられた時に断片的で時に口ごもる言葉が、それが向けられた他者のみでなく、発した人間自身の思考をも縛り、また変えていく。そのリアルをすくい取ることの、なんとうまいことか。

・阿部共美『潮が舞い子が舞い』10巻を読む。ある海辺の町の高校2年生たちの日常を描く集団劇。こちらは対照的に、きわめて饒舌で技巧的な会話が高校生たちのコントロールできないエネルギーを読む者にぶつけてくる。熱っぽいクールさ、真剣な遊び。集団的な生きものとしての高校生。それを延々と描いておいての静けさに満ちた最終話が、やはり阿部共美だなあと思う。