ホンダヨンダメモ/Z

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羽海野チカ『3月のライオン 11』(白泉社)

妻子捨男こと三姉妹父との対決・完結編。

3月のライオン 11 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 11 (ジェッツコミックス)

 

 いつにもまして絵と文字がぎっしりと描き/書きこまれスミベタが多用されて黒っぽいのだった。それがまた心地よい。

「フツウ」から大きく外れた青少年のもがきを描かせたら右に出る者はない羽海野チカだが、そんな彼らを「成長」させるためには特殊な場を設定する必要があるのだ。『ハチミツとクローバー』の美大もこの作品のプロ棋士界も、才能と努力さえ備えていればあらゆる人間を許容する世界という点で、同じくらいその「場」にふさわしい。

同じように外れた人間であっても、「場」を見つけられない場合、あるいは見つけてもそこから逃げ出すならば、三姉妹の父のようにまったく「成長」できない。羽海野チカはそういうことをきっちりじっくりと描くので、その物語はある意味残酷である。

物語の中で一方の残酷さとバランスを取るのは身体に関わる描写で、食べる幸せであったり川の字になって寝ることであったりあかりおねいちゃんがよりふくよかになったりすることなのだ。それが羽海野チカのネガティブな健全さを支えている。

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