ホンダヨンダメモ/Z

読書メモ。読んだもの観たもの聴いたもの。

『もやしもん 12』は日本酒とセーラー服

石川雅之『もやしもん 12』(講談社、2013年4月)

 youthからadultへの移行期において、ややこしいことをややこしいこととしてそのままにしつつ、自分がどこに向かっているのかよくわからぬまま、しかし妙に一生懸命になれ、変に充実した(気分の)日々を過ごすことのできる場。大学がそのようなユートピアだったのはもしかしたらもう過去のことなのかもしれない、という感慨が中高年たるold adultにはあるわけだけれど、不思議なことに、いやマンガや児童文学というものの性質を考えたら不思議ではないのかもしれないが、そういうノスタルジックな大学の姿が現在のマンガのなかには生き残っている。農大を舞台にしたこのマンガも、まさにそのど真ん中だ。

 12巻は日本酒の話。この作品、一見ウンチクマンガのように見え、その実ウンチク部分はミステリーにおける隠された謎の役割であって、まったく正統的な、モヤモヤとジタバタに溢れた青春群像なのであった。

 もし、ここで描かれているような大学の世界が現実には消えつつある(もちろん基本的にはフィクショナルなユートピアであるからしてもともと実際に存在するようなものではないのだが、ある種の代理表象として現実を映したもの、ということだけれども)のだとしたら、モヤモヤやジタバタはいったいどこで受け止められ吸収されるのか、と、ぼくなどは考えてしまう。もはや(おおかたの)大学にそんな余裕はない、のではないか。理由のない焦りは若者の持ち分だが、今は焦る理由を「大人たち」がよってたかってご親切にも提示してくれる。

 「解放」はYA文学の大きな要素のひとつだけれど、それは現実の「束縛」と対になっている。その意味で、このマンガは「ヤングアダルト・グラフィックノベル」として読まれうるだろう。

 もうひとつ。大学で授業している人間として考えたのは、ガキはガキ扱いすべきときがある、ということかな。

 今回のフェチはクール系セーラー服眼鏡女子。ちなみにぼくは限定版を買いました。表紙カバーをめくると、「Super Oktoberfest in Tokyo Dome 2012」のイラスト。Dirndl姿の及川が。厚木にある地ビール蔵「サンクトガーレン」で、東京ドームでも売られた「もやしもんコラボビール 超インディア・ペールエール」が3月26日に発売、とのことだったけれど、ネットショップでの販売分は売り切れ、とのこと。販売店ではまだ在庫があるかも。