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『ヤング・アダルトU.S.A.』を読んだ

長谷川町蔵×山崎まどか『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS、2015年8月)

 

ヤング・アダルトU.S.A. (ポップカルチャーが描く「アメリカの思春期」)

ヤング・アダルトU.S.A. (ポップカルチャーが描く「アメリカの思春期」)

  • 作者: 山崎まどか,長谷川町蔵,川原瑞丸,多屋澄礼,藤田康平(Barber)
  • 出版社/メーカー: DU BOOKS
  • 発売日: 2015/08/06
  • メディア: 単行本
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 副題は:ポップ・カルチャーが描く「アメリカの思春期」。

 ドイツにおけるJugendbuch、つまり青少年向けの本のことはいくつか参考文献を読み、また作品にも接してその動向・傾向を知っているけれども、「ヤング・アダルト」といえばやはり本場はアメリカで、しかしそれを見通しよく解説してくれる(日本語で読める)本はなかなかない。本書は映画やテレビドラマを中心としながら、アメリカ合衆国における若者文化、というかそれを描き出すメディアについて、対談形式でディープに語る。アメリカの若者(とそれを俎上に載せる作品群)ってそうなんだ! と、楽しく蒙を啓かれる…。

 80年代に「ティーンムービー」を撮った巨匠ジョン・ヒューズ(『ブレックファスト・クラブ』『プリティ・イン・ピンク』など)、テレビドラマ『glee/グリー』、リアリティ・ショー、YA小説、ヒット曲とアーティスト、プレッピー、アメリカの大学。アメリカの文化の裾野の広さ、底の深さはやっぱりすごいのだ。

  YA小説に関して言えば、今ヒットしているのは、

まどか:SF路線と青春小説のふたつに絞られているよね? 前者が『ハンガー・ゲーム(Hunger Geme)』や『ダイバージェント(Divergent)』で、後者が『さよならを待つふたりのために(The Fault in Our Stars)』みたいな」(91ページ)

「SF路線」にはファンタジーYAも含む。本文にもあったけれども、日本ではマンガが担っている部分をアメリカではYA小説がカバーしている、のだろうな。あるいは、いわゆるラノベが。レインボウ・ローウェル『Eleanor & Park』は邦訳がでるということだが、これは楽しみ。

 ドイツで68年以降70年代に、それまでタブーとされていたテーマを扱う作品が多数書かれる(「反権威主義的児童文学」の流れの中で)わけだけれど、そう、アメリカにはジュディ・ブルームがいた。アメリカのYA小説のルーツについて、

まどか:(…)とりあえず、現代的な思春期の男女の特徴的な一人称が確立された小説を起点にしたいな。 そうすると、男子はJ.D.サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』で、女子はジュディ・ブルーム『神さま、わたしマーガレットです』ってことになる。(98ページ)

『神さま、わたしマーガレットです』は1970年の作品、初潮がテーマ。『 カレンの日記』(1972)は両親の離婚、『いじめっ子』(1974)ではいじめ、などなど。

 冒頭でも述べたとおり、映像作品がメインで取り上げられているのだが、そのすべてが観たくなる。著者ふたりのやりとりは愛に満ちていて魅力的。とくにジョン・ヒューズの作品、ビデオ屋いって探してみよう…。