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魔法にかけられたエラ(ゲイル・カーソン・レヴィン、三辺律子訳、サウザンブックス、2016年12月)

 

魔法にかけられたエラ

魔法にかけられたエラ

  • 作者: ゲイル・カーソン・レヴィン,三辺律子
  • 出版社/メーカー: サウザンブックス社
  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: 単行本
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(Mediumで以前公開したものを、こちらに移します)

原題 Ella Enchanted、1997年の作品。以前サンマーク出版から『さよなら、「いい子」の魔法』というタイトルで刊行された翻訳が、サウザンブックスで復活した。サウザンブックスはクラウドファンディングで資金を集めて外国文学の翻訳を出版しようというプロジェクトで、これが最初の刊行。目標金額に到達したのだ。ぼくもクラウドファンディングに参加したので、製本された本が送られてきた。こういうのは応援したい。

生まれたばかりのエラに、妖精が(本人的には善意から)魔法をかける。エラはどんな命令にも必ず従うでしょう、と。この「従順」の呪いがエラに足枷をはめる。父は商売のことしか頭にない人間、優しくて快活な母は病で死ぬ。エラは父によって寄宿学校へ入れられ…。

魔法を使う妖精、オグルやノームといった異世界の住人、誕生のときの呪い、王子と舞踏会とガラスの靴、などなど。「いばら姫」+「シンデレラ」、昔話や妖精物語の道具立てを使ったファンタジー。ただし、主人公は明確な意思を持ち、みずからの力で事態を打開していくところが、やはり「今」の物語だ。彼女は優れた言語習得能力を持ち、その力が苦境に直面する彼女を助ける。こういう設定はぐっとくるものがある。好き。

ちゃんと悪役も出てくるし、主人公はしっかり(?)いじめられるし、そこをいくつかの意表をつく仕掛けできっちりハッピーエンドに持って行く、作者のストーリーテリングはとても巧み。三辺律子の訳文もリズミカルで工夫もあって良い。面白かった。