ホンダヨンダメモ/Z

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石井妙子『女帝 小池百合子』(文藝春秋、2020年5月29日)

 布団にもぐり込んでも(いや、このところ暑いので実際にもぐり込んでいるわけではないが、常套句として)、頭が冴えてなかなか寝付けないので、たいていKindleで本を読んでいる。小説だとつい読み進んでしまってよけいに眠れないから、美術や哲学関係とか、科学の本とか、ノンフィクションなどを読むことが多いのだけど、今回の本はちょっと失敗。いろいろな意味で毒気に当てられて眠気がぜんぜんやってこないのである。

 話題の本。あとがきによると執筆に3年以上かかったとのことだが、まあタイミング良く出版されたものだ。

 

女帝 小池百合子

女帝 小池百合子

  • 作者:石井 妙子
  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: 単行本
 

 

 わたしとしては、細川・小泉・安倍・小沢と乗り換え乗り換えの経歴や、前回の東京都知事選の時のあの公約のでたらめさ、「クールビズ」から「ウィズコロナ」までの薄っぺらで空虚なフレーズを得意げ言うところなどなどから考えて、そういう人だろうなとはわかっていたけれど、あらためて読むと、すごいね、という感じである。

 読んでいて憂鬱になったのはもうひとつ、著者の文章のスタイルに気になるところがあったからでもある。女性であること、容姿やファッション、生まれ育ち、などの話を彼女の生き方のあらゆる場面に結びつけていく。「……とするならば、〜とは言えまいか」「〜ではないだろうか」的な文が、かなり多用される。そのような書きぶりの「ノンフィクション」を、わたしはあまり好まない。筆者の真摯な執筆姿勢は認めるとしても。

 よく考えれば、よく考えなくても、小池のような政治家はふつうにどこにでもいつでもいるし、いただろう。そもそも、窮状を訴える市民都民に共感を寄せることなく平気で切り捨てられる小池、堂々たる嘘とはぐらかしの弁舌で生きてきた小池と、国会審議で当事者たる人々が傍聴しているのを前にして平気でヘラヘラ笑いができる総理、嘘がばれそうになると記録を消し、ご飯論法などを駆使してはぐらかしの答弁にいそしむ総理は、同じ穴のムジナではないのか。

 いやむしろ、政治的信条はなく「政治家をやりたいだけ」で、仲間を作ることができない政治家よりも、先の戦争はアジア解放のための戦いであり憲法に基本的人権の規定は不要だという政治的信条を持ち、仲間やおともだちだけをだいじにし便宜をはかる政治家のほうが、よりその言動を注視すべき存在ではないか。

 それはそれとして、こんどの都知事選、主要な顔ぶれがほとんど詐欺師まがいばかりというのも、なかなかにつらい感じだよねえ……。