ホンダヨンダメモ/Z

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「外国語学部」への(気の早い)ノスタルジー

黒田龍之助『ぼくたちの外国語学部』(三修社、2013年3月30日)

黒田龍之助とは同年の生まれなのだ。ぼくとは資質において性格において考え方において異なるところ多だけれど、この本の最大のテーマであろう点に、ぼくは大きく頷く。

「外国語学部にはいろんな可能性がある。」

「外国語学部には多様性がある。」

ほんとうにその通りだ。

ぼくは大学を選ぶとき、「外国語学部」の持つ自由な響きにひかれた。日本語にまつわることについて読んだり考えたりすることが好きで、西江雅之や千野栄一、丸山圭三郎などの書く言語学の本をわくわくしながら読んで、でも詩や小説も好きで、文化人類学や心理学にも興味があって…。そしてドイツの児童文学を専門とする、高校の英語の先生にあこがれて。

だとしたら、「外国語学部」に行けばいいじゃないか! そう思ったんだ。

この本には、幾人かの学生が登場する。ちょっと変わったタイプの学生たちとも言えるし、「外国語学部生」っぽい、よくいる学生たち、とも言える。ぼくもこの大学で非常勤講師をしているから、ああ彼だ、と顔が浮かんでくる学生もいる。

それぞれ魅力的だし、それを文字にのせて描き出す黒田の筆致も魅力的。

大学は、集団で一方向に進むようなものであって欲しくない。薄暗い廊下の先にたくさんの扉があって、勇気を持ってそれを叩くと、中には未知の世界がその深い口を開けている。叩いてもよし、叩かずとももよし。人と交わることの楽しさあり、しかし人がどうあろうと許容する懐の深さあり。

それが理想なんだけどね。

「外国語学部」や「外語大」に入った方々も、卒業された方々も、面白く読めると思います。

ぼくたちの外国語学部

ぼくたちの外国語学部