小田急線参宮橋駅で降りて商店街を抜けつつ、10分ほど歩いて初台へ。東京オペラシティアートギャラリーで開催されている「鈴木理策写真展 意識の流れ」を観た。
鈴木理策は1963年生まれ、故郷である熊野や、サント・ヴィクトワール山、セザンヌのアトリエを撮った作品などで知られ、2000年に木村伊兵衛写真賞受賞。
熊野の風景、水面に映った森の景色、雪、桜…。この展覧会は作者自身が展示を構成したという。大きくプリントされた同じ大きさの写真が等間隔に、同じ高さで、並べられる。そこに作者の意図があるのは明かだ。
大判カメラ(8×10)で写された、952×1190㎜、1200×1550㎜の写真のシークエンス。写真家が確かに見た風景でありながら、しかし人間の目の機構とは異なるシステムによって捉えられた世界。ある風景を注意深く眺めたことのある人間ならば、ひとつひとつの作品を追っていくにつれて両者のズレがひりひりと意識されるはずだ。
切り取られた世界のなかに潜むのは、きわめて精緻な細部を誇示する焦点のあたった部分と、ふわりとした地をなすボケの拡がりであり、それは写真によるメカニカルな表現なのだが、一方でそれは、ある部分は鏡のようにクリアに、ある部分は揺らぎつつ、木々を映し出す水面へと変換される。そのような「技巧」に、この写真家の特質があるのだろう。おそろしく美しいが、その美しさを捉えようとするこちらの目玉も、いつのまにか被写界深度を操作されている、ような気分になる。それが心地よい。
23日まで。