八島正年・八島夕子著、オーム社、2018年10月刊。
著者の二人は横浜山手町で「八島建築設計事務所」を営む建築家。自宅兼事務所について語りつつ、家のこと暮らしのことを建築家からの視線で語る本。
住宅の設計にかんする本を読むのが好きだ。住空間はその中にいる人間の行動のみならず思考のあり方まで変化させるような気がする。空間のほんのささいなディテイルが人にときに安心感ときに不安感を(気づかぬうちに)生じさせもする。
どういう場所が家の中心かではなく、「家に中心を据えて空間をつくること」を僕たちは大切にしている。すべての空間を均質につくらず、その家の“へそ”のような存在を設計する中で探し、そこから全体に空間を広げていくような感覚を常に持っている。(31ページ)
その場所になんとなく家族が集まる。お互いに干渉し合うわけでもなく、しかしその存在はつねに感じている、その上でゆっくり寛げる、そんな場所。わたしが常々欲しいと思っていた空間だし、そしていろいろ工夫してみるものの、どうしてもそれがうまく作れない。
わたしは今マンションの一室で暮らしているのだけれど、わたしも妻も育ったのは一軒家。今住んでいる住まいは長く住んでそれなりに馴染んでいるものの、箱を壁で区切っただけ、のようなとりとめのなさに、いまだにうまくなれることができないでいるのだ。
ふわりと体に纏っているような家に住みたい。